【検査75gOGTT】とは、ブドウ糖負荷試験のことです。糖尿病が疑われている人に、糖尿病かどうかを確定診断します。

毎月採血してチェックしているHbA1c。今月の結果、あなたはどこになるかな?

高尿酸血症、高血圧、 肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、高血圧・ 高尿酸血症、高血圧などについて。

 
 

<2016年8月2日更新>

<ナースの一言>

〜帯状疱疹のワクチンについて〜

<帯状疱疹の発症予防に水痘ワクチンが!>

米国にて4年間にかけ帯状疱疹の予防、重症化の防止効果に関する大規模臨床研究が行われ、水痘ワクチンが帯状疱疹の発症を抑制することが分かりました。

対象は60歳以上の成人37,200名でワクチンとプラセボ(偽ワクチン)を接種したところ、帯状疱疹の発症は51.3%減少し、帯状疱疹後神経痛の発症率も66.5%減少したと報告されています。中高齢者にも水痘ワクチンを接種すると50〜69歳で約90%、70歳代で約85%に水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫が上昇したとの報告もあります。

米国では水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンとは元は同じだそうですが、帯状疱疹ワクチンは水痘ワクチンより10倍以上濃厚に作られているとのことです。日本の水痘ワクチンは米国の帯状疱疹ワクチンに匹敵する濃度があります。従って、日本の水痘ワクチンはそのまま帯状疱疹ワクチンとしての役割も果たすことができるのです。予め水痘ワクチンが接種されていると、液性及び細胞性免疫が獲得されウイルスの増殖は阻害されて、水痘の発症は防御される上に、この免疫は長期間にわたり持続するものと推定されています。また、加齢等により免疫が低下した場合、ウイルスが再活性化し帯状疱疹を発症することがありますが、ワクチンを接種していることにより帯状疱疹後神経痛の発症率や重症化が抑えられます。

厚生労働省は2016年3月、水痘ワクチンの効能効果に50歳以上を対象として「帯状疱疹の予防」という適応を追加承認しました。現在実施されている医療機関は少ないのですが、今後帯状疱疹を予防する目的でのワクチン接種が推奨、普及されていくものと思われます。

<帯状疱疹とは…>

身体の片側に起きるピリピリと刺すような強い痛みと、痛みがある部分にできる帯状の赤み、ブツブツ、水ぶくれが特徴です。

帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスによる感染症で、このウイルスに初めて感染した時は帯状疱疹ではなく水ぼうそうとして発症します。水ぼうそうにかかるのはほとんどの場合、子供の頃で水ぼうそうは治ってもウイルスは体内の神経節というところに潜んでいます。発症年齢は50〜70歳代も多いのですが、高齢者も多くかかりやすくなっています。

原因として、体力の低下や過労、病気、老化等でウイルスに対する抗体の力が弱くなった時に神経に沿ってダメージを与える病気なのです。特に高齢者では帯状疱疹後神経痛によりうつ症状をきたしたり、食事が摂れずQOLの低下から寝たきりになるという経過をたどる人もいます。


<2015年12月15日更新>

新しいがん免疫療法

がんは日本人の死因の約3割で、その治療法が進んできたとはいえ未だに死因の第一位となっています。従来がんの治療といえば手術療法、化学療法、放射線療法が三大治療法でした。しかし第四のがん治療として最近注目されているのががん免疫療法です。

これまでのがん免疫療法はがんに対する免疫機能を増強させる手法が一般的なものでした。しかし近年、免疫チェックポイント阻害療法という新しい治療法が注目されています。最近の知見ではがん細胞が免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞からの攻撃を阻止していることが明らかになってきました。そこでがん細胞によるブレーキを解除することで免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻撃できるようにするという新たな治療法が考え出され、これが免疫チェックポイント阻害療法と呼ばれるものです。

がん治療を変えると期待されている免疫チェックポイント阻害薬ですが、すべてのがんに対して同じように効果があるわけではありません。一般に遺伝子の変異が多いタイプのがんに効果が高いと考えられています。具体的にはメラノーマや肺がん・腎臓がん・ホジキンリンパ腫ではこの薬が効きやすく、膵臓がん・前立腺がん・大腸がん等には効きにくいとされています。

がんに対する化学療法(抗がん剤治療)の場合は薬剤耐性という問題があり長く使っていると効かなくなることがありますが、免疫チェックポイント阻害薬の場合は免疫細胞の活性化によるがん細胞への攻撃であるため効果が減弱することは少ないと考えられています。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんの種類による効果の差、免疫細胞の暴走による副作用、薬価(非常に高価)などの課題はあるものの非常に有望な新しいがん治療法として今後その使用が広がっていくと考えられています。


<2015年4月25日更新>

糖尿病食事療法のための食品交換表

先日、糖尿病食事療法のための研修会に参加してきました(*^_^*)
厚生労働省による2013年人口動態統計の結果から、糖尿病や高血圧が深く関わる心疾患や脳血管疾患で亡くなる人の数は年々増えています。糖尿病死亡率ワースト1位の徳島県の取り組みは、「運動不足の解消」「バランスの良い食生活」「定期的な健診の推奨」「自分にあったストレス解消法」など様々な活動がなされています。特に食生活においては、「野菜摂取量1日350g」「野菜を食べよう」「両手いっぱいの野菜を」に重点を置き、勉強会やパンフレット配布などで広く呼びかけています。糖尿病患者さんやその他疾患を抱える患者さん、健康な人にも役立つ食品交換表を表にまとめてみました。

【6つの食品グループと調味料】

食品 1単位(80Kcal)の食品の重量の例
T
炭水化物
1 穀物・いも類
豆類(大豆を除く)
ご飯50g、食パン30g(1/2枚)、うどん(ゆで)80g、 そば(ゆで)60g 、じゃがいも110g、さつまいも60g、コーンフレーク20g、西洋かぼちゃ90g
2 くだもの りんご(1/2個)150g、バナナ100g、ぶどう150g、みかん200g、すいか200g、グレープフルーツ200g、いちご250gかき150g
U
たんぱく質
3 魚介類
肉類

チーズ
大豆製品
かれい80g、さば40g、さけ(切り身)60g、ゆでだこ80g、鶏肉ささみ80g、豚肉もも(薄切り)60g、さつま揚げ60g、牛肉もも(薄切り)40g、鶏肉もも(皮なし)60g、鶏卵50gプロセスチーズ20g、木綿豆腐100g、納豆40g、油揚げ20g
4 牛乳
乳製品
(チーズを除く)
普通牛乳120ml
ヨーグルト(全脂無糖)120g
脱脂粉乳(スキムミルク)20g(大さじ3杯)
V
脂質
5 油脂類 バター10g(小さじ2杯半)、ベーコン20g、
アボガド40g、マヨネーズ10g(大さじ軽1杯)、
植物油10g(大さじ軽1杯)
W
ビタミン
ミネラル
6 野菜
きのこ
海藻
緑黄色野菜と淡色野菜の組合せ300g
海藻、きのこ、こんにゃくなど制限なし
その他   調味料 みそ40g(大さじ2杯)、砂糖20g(大さじ2杯)、
トマトケチャップ60g(大さじ3杯)

※緑色・・・1単位中に食物繊維2g以上を含む。
※赤色・・・1単位中に食塩1g以上を含む。
※橙色・・・1単位中に脂質5g以上を含む。

栄養バランスのよい食事にするための単位配分例
  毎食食べる食品 1日に食べる食品
1600kcal
(20単位)
の場合
表1 表3 表6 表5 調味料 表2 表4
10.0単位 4.5単位 1.2単位 1.0単位 0.8単位 1.0単位 1.5単位

※通常の食品交換表では緑色・赤色・橙色のマークで表示されていますが、この表では文字に色付けをしています。

 

2013年「食品交換表」が過去10年間の国民健康、栄養調査などの結果を基に改定・変更されました。

主なものは、
〇食品の1単位あたりの栄養素の平均含有量
〇「調味料」の1単位あたりの栄養素の平均含有量
〇掲載食品数の増加
⇒表1にはナンや餃子の皮、乾燥芋などが追加されました。外食料理や調理加工品類、嗜好食品も追加されました。
〇食物繊維の豊富な食品に緑色のマークが付き、積極的に食べると良い食品が一覧から直ぐに探せます。
〇炭水化物が主に含まれる食品に1単位あたりの炭水化物量 (g)が示されました。
参考資料には1単位あたりの炭水化物、糖質、食物繊維の量(g)の一覧表が加わりました。
〇体重、身長、指示エネルギー量、単位配分などを書き込むページが加わりました。記録することで、「食品交換表」をマイノートとして活用し、食事療法の継続を後押ししています。
〇炭水化物エネルギー比率60%の単位配分例に55%、50%の比率配分加わります。推奨される炭水化物エネルギー比率は、50〜60%です。
15単位、18単位、20単位、23単位の4つのパターンに60%、55%、50%を加え合計12パターンが示されました。

※糖尿病に適正な炭水化物量の下限は50%であることを示しています。

日本人の死因の上位を占める生活習慣病の発症に食事や運動、喫煙、ストレス、飲酒などの生活習慣が大きく関わっています。
良好な血糖コントロールを維持することで、合併症や疾患の予防・改善が可能となるため、糖尿病指導の取り組みは私たち医療者にとって最重要課題だと痛感しました。
私たちナースも食品交換表を使って献立を作ってみようと思います。


<2014年10月29日更新>

<ナースからの一言>

〜ピロリ菌感染について〜

「胃癌主因はピロリ菌」20年ぶり認める
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)はこのほど「胃癌の80%はピロリ菌感染が原因で、除菌によって胃癌発症を30〜40%減らせる」との報告書をまとめました。IARCは20年前にピロリ菌感染を胃癌の発症要因に分類していましたが、主要因と明言したのは初めてで、各国には国内事情に応じてピロリ菌による胃癌予防策を検討するよう求めています。

「ピロリ菌感染について」

ピロリ菌はヘリコバクター・ピロリ菌といい、らせん状をしています。日本人の40代では半数以上、50代以上からは7割以上がピロリ菌に感染していると言われています。感染により胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎の原因のみならず、胃癌の発生にも深く関わっていることがわかっています。

「ピロリ菌の検査方法」

ピロリ菌に感染しているかどうかを確認する検査には、胃内視鏡を使用する方法と使用しない検査があります。

■内視鏡を使う方法

1)培養法

胃の粘膜を採取してすりつぶしてそれをピロリ菌の発育環境下で5〜7日培養します。

2)迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が持っているウレアーゼという尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。採取した粘膜を特殊な反応液に添加し、反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。

■内視鏡を使わない方法

1)尿素呼気試験

  1. 尿素(ユービット)服用前に呼気を採取します。
  2. 空腹時に尿素を水100mlとともに服用します。
  3. 尿素服用20分後の呼気を採取します。

*胃の内容物は約4時間で十二指腸に流出されることから、検査には最低食後4時間は空けます。朝食をとった患者さんについては昼食を抜いて午後から検査します。

2)抗体測定

人はピロリ菌に感染すると抵抗力として菌に対する抗体をつくります。血液中や尿中などに存在するこの抗体の有無を調べる方法です。

3)糞便中ピロリ抗原測定
糞便中のピロリ抗原の有無を調べる方法です。

「ピロリ菌の除菌方法」

ピロリ菌の除菌には胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤)と2種類の抗菌薬を使用します。薬を中断するとピロリ菌に耐性が出来てしまい再治療をしようとしてもうまくいかなくなる可能性がありますから、服用スケジュールをきちんと守りましょう。

薬の服用を終えた4週間以降に除菌できたかどうかの検査します。これで除菌できなかった場合は抗菌薬のうち1つを初回とは別の薬に変えて再度除菌します。1回目、2回目の除菌療法を合わせると除菌成功率は95%以上になります。


<2014年1月27日更新>

糖尿病の新しい薬 〜SGLT2阻害薬〜

世界的に研究・開発が進められ、日本でも「今春には発売予定」となっている新しい糖尿病治療薬、それが「SGLT2阻害薬」です。

SGLT2は腎臓の近位尿細管でのブドウ糖の再取り込みにおいて重要な役割を担っています。通常、腎臓に入った血液は糸球体で濾過され、身体に必要なものは血液に再吸収され、不必要なものは尿として体外に排泄されます。糸球体で濾過された原尿に含まれているブドウ糖の99%以上が再吸収されるのですが、この原尿中のブドウ糖再吸収の役目を担っているのがSGLT2で、この働きのおかげで私達の身体にとって必要なエネルギーであるブドウ糖が再吸収され体外に排出されずにすんでいるのです。そこで、SGLT2の働きの邪魔をすればブドウ糖の再吸収率が低下し高血糖状態が解消されるのではないか、血糖が多いのならば無理に血液に糖を再吸収させずに体外に排出してしまえば良いと言う発想から生まれたのが「SGLT2阻害薬」なのです。

糖尿病は血液中に多くの糖が存在することで身体に悪影響を及ぼすのだから、余分な糖は不要なものとして体外に排出してしまえば血糖値は正常になりインスリンを分泌する負担が減るため膵臓のランゲルハンス島も休む事ができ、その結果機能回復が期待できるわけです。たくさんのブドウ糖を排泄(60〜80g/日)するので体重減少(2〜4kg)の効果や腹囲減少も確認されているようです。また単剤与薬では低血糖リスクはなく、収縮期血圧を低下させる効果も期待されています。これまでの糖尿病薬は主としてホルモンのインスリンをターゲットとしたもので、膵臓からのインスリン分泌を強めたり、インスリン感受性を高めたり、不足しているインスリンを体外から注入して補充する事でした。しかし「SGLT2阻害薬」はインスリンではなく、腎臓を目標にした初の血糖降下薬なのです。

今迄は尿中に糖が出るのは悪いことと思われていましたが、逆の発想から生まれた画期的な治療法で、患者さんにとっても内服するだけという簡便さは心理的にも抵抗感が少ないと思われます。また単剤や他の経口血糖降下薬との併用療法での有効性、安全性も確認されています。しかし尿中の糖が多いと細菌が増えやすくなって、特に女性では尿路感染症やカンジダ症が懸念されたり、利尿効果があることから高齢者に於いては起立性低血圧に伴うめまいや脱水、電解質異常等の報告もあるなどリスクについてはまだ不明な点もあるようです。理論的には(腎障害を除いて)糖尿病の発症機序や病態にかかわらず血糖値の改善効果は期待されています。

いずれにしても糖尿病患者さんにとって、新薬の誕生は大きな希望となります。しかし間違えてはならないことは薬物のみに依存しないということです。糖尿病治療の基本である食事療法や運動療法を疎かにすれば、たとえどんなにすぐれた糖尿病新薬ができても十分な効果を発揮することはできないということなのです。

 


<2013年7月23日更新>

マダニ媒介感染症に注意!

マダニ媒介感染症とは、マダニに咬まれることによりウイルスや細菌などに感染することです。
人が野外活動や農作業、レジャー等で、ダニ等の生息地に立ち入ると、ダニに咬まれることがあります。ダニがウイルスや細菌などを保有している場合、咬まれた人が病気を発症することがあり、国内では、日本紅斑熱や、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などが知られています。特に重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染では、重症化し、死亡する事もあり、これらの感染症にかからないためにも、野外でのダニ対策を十分に行う必要があります。

マダニとは

一般に家の中に住むダニとは違って固い外皮に覆われ、大きさは吸血する前のもので約3〜4oあります。マダニは、動物の血液を餌とし、吸血した血液から栄養成分だけを取り出し、余分な水分や唾液を宿主のからだに戻します。この時にマダニを媒介しているウイルスや細菌などが、宿主の体内に送り込まれるのです。

マダニの生息場所は山や野原以外にも、庭や公園など草木が茂っている場所なら何処にでもいます。また、寒い地方を除いて5月上旬から秋にかけて活動が活発になりますが、1年を通して活動しているので、冬でも油断できません。

マダニに咬まれないようにするには

  1. 草むらや森林などで長時間地面に直接寝転んだり、座ったりするのはやめましょう。
  2. 肌の露出をさけ長袖、長ズボン、手袋、長靴等を着用しましょう。また、付着したマダニを発見しやすい、明るい色の衣服を着用しましょう。
  3. 皮膚の露出部(頭皮や足指など)は、人用虫除け剤の使用も有効です。
  4. 帰宅後はすぐ入浴し、身体をよく洗い、新しい服に着替えましょう。着ていた服はすぐに洗濯するか、屋外げ天日干ししましょう。

もしマダニに咬まれたら

マダニが皮膚に咬みついている場合、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ったり、マダニの体内に病原体がいる可能性があるので、直接手で取ったり、つぶしたりしないでください。吸血中のマダニを見つけたら、出来るだけ病院で処置してもらいましょう。また、マダニに咬まれた後に、発熱等の症状が認められた場合は、早めに医療機関を受診してください。

ダニが媒介する感染症について

■日本紅斑熱

日本紅斑熱リケッチアという細菌による感染症です。キチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトダニなどを媒介して感染します。人から人に感染することはありません。日本紅斑熱の発生は4月〜11月、特に夏期に集中しています。

〈症状〉
ダニ類に刺された後、2〜8日ほどの潜伏期間の後、高熱(38〜40℃)の発熱が2〜3日続きます。また、倦怠感や頭痛、関節痛、筋肉痛、悪寒もあり、米粒〜小豆大の発疹が四肢や手のひら、顔などに現れ、全身に広がりますが、かゆみや痛みがないのが特徴です。発疹は3〜4日目にピークとなり、2週間ぐらいで消えていきます。

ダニに咬まれたとこらが、5〜10oくらいに赤く腫れたり、かさぶたをつくったりします。
治療により良くなる感染症ですが、重症化することがあり、多臓器不全や ※DIC(播種性血管内凝固症候群)などの重い症状で死亡することもあります。
※DIC;感染症や癌などの疾患が重症になった場合に併発するもので、血液凝固(血栓形成)と出血傾向が同時に見られる状態

〈治療〉

早期発見・早期治療が重要です!
疑わしい症状がある時にはすぐ医療機関を受診して下さい。高熱や倦怠感があるため、風邪と間違われることもあります。受診の際は野山等にでかけたことを伝えるようにしてください。

治療にはテトラサイクリン系抗生物質やニューキノロン剤が有効です。

■重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSは2009年に中国で見つかり、2011年に命名された新しいウイルス感染症です。2013年1月に国内で最初の報告以降、国内でも患者が確認されるようになり、徳島県内でも 感染事例が確認されました。

マダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心ですが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されています。2013年4月より、※四類感染症の指定となりました。

※四類感染症の患者を診察した医療機関は直ちに保健所への届け出が必要です。日本紅斑熱も四類感染症に指定されています。

〈症状〉

6日〜2週間の潜伏期の後、38℃以上の発熱や、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こします。
致死率は6.3〜30%と報告されています。治療は保存的に行われ、有効な薬剤やワクチンは現在のところ開発されていません。

 


<2013年1月8日更新>

この程、ピロリ菌の除菌治療が慢性胃炎でも保険適用となりました!

ピロリ菌の除菌は胃がんの予防に大きな効果があるとされていますが、これまで、慢性胃炎が進行して胃潰瘍などになるまでは、除菌に保険が適用されませんでした。今回の対象者拡大は胃がんの発生者数を大幅に減らせる可能性があると期待されています。
当医院でも、胃内視鏡検査の際、慢性胃炎の方にはピロリ菌が関与していないかどうかを調べ、陽性の場合には除菌治療を行うようになりました。

 

なぜ除菌が必要なのでしょう?

ピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリ菌といい、らせん状をしています。日本人の40代では半数以上、50代以上からは7割以上がピロリ菌に感染していると言われています。感染しても胃潰瘍などの病気を発症するのは、約5%に留まりますが、胃潰瘍患者の実に90%以上がピロリ菌感染者と言われています。

 

ピロリ菌は胃の粘膜に住みつき、自ら住みやすい環境を作り出して生息しています。その時にピロリ菌が発生させる多くの毒素が胃粘膜の障害をもたらしているのです。
ピロリ菌の感染は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎の原因になるばかりか、胃がんの発生にも深く関わっていることがわかっています。1994年には世界保健機関(WHO)によって胃がんの確実発がん因子として認定されました。

 

日本人のがんの罹患率第1位である胃がんは年間10万人以上が発症すると言われ、ピロリ菌は胃がんの原因の9割を占めるとされています。今回のピロリ菌治療適用の大幅拡大により、胃がんの発生数は4分の1程度にまで減少すると言われています。

 

ピロリ菌検査はどうするの?

ピロリ菌を保菌しているか判断する方法は、大きく分けて内視鏡を使って行う検査と、内視鏡を使わない検査の2通りに分けられます。

 

○内視鏡を使う方法…胃の粘膜を少し採取しそれを使って検査する方法です。
◆培養法…胃の粘膜を採取してすりつぶし、それをピロリ菌の発育環境下で
5〜7日培養して判定します。
◆迅速ウレアーゼ法…ピロリ菌が持っているウレアーゼという尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。
◆組織検鏡法…胃の粘膜の組織標本に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で探す組織診断方法です。

 

○内視鏡を使わない方法…尿検査、血液検査、呼気検査など。
◆尿素呼気試験法…診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。最も精度の高い診断法です。簡単に行えるので、感染診断前と除菌療法後4週間以降の除菌判定検査に推奨されています。
◆抗体法…人はピロリ菌に感染すると、抵抗力として菌に対する抗体をつくります。血液中や尿中などに存在するこの抗体の有無を調べる方法です。血液や尿などを用いて、その抗体を測定します。
◆抗原法…糞便中のピロリ菌の抗原を調べる方法です。

 

ピロリ菌の除菌はどうするの?

ピロリ菌の除菌には、3種類の薬が用いられます。
1つは、胃酸の分泌を強く抑制する作用が有り胃潰瘍の治療にもちいられる「プロトンポンプ詐害薬(PPI)」です。胃酸の分泌を抑制し、抗菌薬の効きをよくします。また、この薬にはウレアーゼ活性を抑制する作用もあります。
それに加えて「クラリスロマイシン」と「アモキシシリン」の2種類の抗菌薬が使用されます。
これらの薬を1日2回、朝食後と夕食後に、1週間服用します。その間、薬を飲むのを飛ばしたり、勝手にやめたりしないでください。薬を中断すると、ピロリ菌に耐性が出来てしまい再治療をしようとしてもうまくいかなくなる可能性があります。服用スケジュールをきちんと守りましょう。
薬の服用を終えた4週間後以降に、ピロリ菌の再検査を行って除菌できたかどうかを判定します。1次除菌での成功率は約70%といわれていますが、除菌に失敗したうちの10%は副作用が出たり指示通りに服用出来なかった事が原因。残りの20%は、クラリスロマイシンに耐性をもつピロリ菌が増加したためと考えられています。除菌の成功率を高めるには、ピロリ菌の抑制効果のあるヨーグルト(LG21乳酸菌)を、薬を飲む2〜4週間前から食べるという方法もあります。このヨーグルトを3週間前から食べると、除菌の成功率が12%程度高くなり、耐性菌をもつ患者でみると、約15%だった成功率が50%以上になったという研究結果があります。


1次除菌で除菌できなかった場合は、抗菌薬を他の薬にかえて再度除菌します。「クラリスロマイシン」を「メトロニダゾール」に変更して7日間同様に服用する方法が行われます。なお、「メトロニダゾール」服用中は禁酒が特に必要です。「メトロニタゾール」を使った2次除菌に成功率は約90%です。


〈診断と治療の流れ〉


〈ピロリ菌除菌治療薬〉

1次除菌…ランサップ400、ランサップ800
2次除菌…ランピオンパック
*いずれも武田薬品工業(株)

 


2013年1月8日更新

ノロウイルスに注意!!

ノロウイルス感染症がこの冬大流行しています。このウイルスは、感染性胃腸炎の原因として非常に多く、感染力も高いと言われています。ノロウイルスに関する正しい知識をつけて頂けるよう、症状・潜伏期間・予防方法などわかりやすくまとめてみました。

潜伏期間…感染から発症までの潜伏期間は24〜48時間です。

食事が原因だったとしても、症状が出てくる直前の食事のせいではなく、前日もしくは前々日の食事が原因だったりするのです。
また、潜伏期間が数日なのに対して、排菌期間は、症状が出る前から始まり、無症状になってからも数週間以上続きます。知らない間にウイルスをまき散らしてしまうと考えると、二次感染に注意が必要です。

主な症状…吐き気・下痢・腹痛・発熱です。

症状はいきなり起こることが多く、何度も嘔吐を繰り返し、吐き気が治まったと思ったら、次に水のような下痢が続く事もあり、さらに発熱を伴う場合もあります。
通常はこれらの症状が1〜2日続いた後治癒し、後遺症もありません。但し、免疫力の低下した高齢者では、死亡した例(吐いたものを咽に詰まらせることによる窒息、誤嚥性肺炎による死亡転帰)も報告されていますので、油断は禁物です。
また、全ての症状が起こるわけではありません。感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状の場合もあります。

染経感路…主に飲食物からの感染と、人からの感染があります。

〈飲食物からの感染〉
感染した人が調理などをして汚染された食品や、ウイルスの蓄積した加熱不十分な二枚貝などを摂取した場合。

〈人からの感染〉
感染者のふん便や嘔吐物からの二次感染や、家庭や施設内などでの飛沫感染があり、一般には人からの感染の方が数が多いといわれています。

治療法…ノロウイルス自体を駆除出来る抗ウイルス剤はありません。

このため症状を和らげる対症療法が行われます。
特に体力の弱い乳幼児や高齢者は、脱水症状を起こしたり体力を消耗しないように、水分と栄養補給を充分に行なわなければなりません。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。下痢、嘔吐により塩分やカリウムなどの電解質が失われるため、水分補給にはスポーツドリンクなどをお勧めします。

予防方法…感染経路を考えると、手洗い、調理器具の衛生管理が重要です。

〈手洗いのタイミング〉

  • 調理を行う前
  • 食事を提供する前(飲食業を行っている場合)
  • 食事の前
  • トイレに行った後
  • 下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後
    *手袋をして直接触れないようにしていても必ず行いましょう。

石けんを十分泡立て、指先、指の間、爪の間、手首までしっかり洗うことが大切です。石けん自体にはノロウイルスを死滅させる効果はありませんが、水洗いでは落としにくい手の脂等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。

また、調理の際に、加熱が必要な食品には、十分加熱することが予防として有効です。食品の中心温度85度以上で1分間以上の加熱を行えば感染性はなくなるとされています。

ノロウイルスには、アルコール消毒は効果がありません。殺菌には、熱湯消毒あるいは家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、殺菌剤が有効です。


2012年9月2日更新

GLP-1受容体作動薬について

食事の摂取が刺激となり、消化管の細胞から膵β細胞のインスリン分泌を増強させる作用をもつホルモンが分泌されます。そのホルモンをインクレチンと言い、GIP・GLP-1の2種類が存在します。どちらも、インスリン分泌促進作用はありますが、GLP-1の方がグルカゴン抑制作用、体重抑制作用に優れています。このインクレチンを分解してしまう酵素が「DPP-4」であり、この「DPP-4」の働きを阻害する作用を持った薬剤がDPP-4阻害薬です。一方、GLP-1のアミノ酸配列を変更するなどの改良を行い、GLP-1をDPP-4によって分解・不活性化の影響を受けにくい構造につくりなおしたものが、GLP-1受容体作動薬なのです。その作用はDPP-4阻害薬よりも強力で、現在1日1回投与及び1日2回投与の注射薬が認可されています。

◆特徴◆

  • 2型糖尿病の治療薬です。
  • 血糖値が高い時のみインスリン分泌刺激作用を発揮するため、単独投与では低血糖が起きにくい薬です。ただし、スルホニル尿素(SU)薬などのインスリン分泌を促す薬と併用すると、低血糖が起こりやすくなります。
  • グルカゴンの分泌を抑え、自然な形で血糖値をコントロールできます。
  • 胃内排泄を遅らせ、食後の満腹感を高める事により食欲を抑えて、体重が増えにくくなります。しかし、使い始めは、胃内容排泄を遅らせる作用のため、便秘・下痢・胃の不快感などの消化器症状が起こることがあります。
  • 血糖値に応じて作用するため、膵臓のβ細胞への負担が少なく、β細胞の働きをみる指標を改善します。

 

◆種類◆

ビクトーザ皮下注18mg(リラグルチド)・バイエッタ(エクセナチド)の2種類があります。どちらも注射薬ですが、使用方法や併用できる経口糖尿病治療薬に違いがあります。

ビクトーザ皮下注18mg バイエッタ
1日1回・朝または夕(決まった時間)に皮下注する。 1回5μgを1日2回朝夕食前に皮下注する。投与開始から1ヶ月以上の観察後、患者の状態に応じて1回10μg、1日2回投与に増量できる。
単独もしくはSU剤との併用でのみ使用可能。 複数の経口糖尿病治療薬と併用可能である。バイエッタ単独での使用はできない。


◆使用に関して◆

GLP-1受容体作動薬はインスリンの代替薬ではない事を理解しなくては、なりません。インスリン依存状態でインスリンからGLP-1受容体作動薬に切り替えた場合、急激な高血糖および糖尿病性ケトアシドーシスが発現することが報告されています。投与に関しては、投与可能か否か主治医と相談し、使用してください。使用開始後も、定期的に血糖の検査を行い、改善がみられ無い時はインスリン治療などにもどす場合があることも理解しておきましょう。


血清脂質の評価

(2012年2月15日)

日本動脈硬化学会はLDLコレステロールに関して、「現在の直接測定法は正確に結果が出ない危険性があり適当ではない」との見解を発表しています。
以前はLDLコレステロールは計算式によって算出していましたが、直接測定法が保険適用になってからは、ほとんどの医療機関が直接法による評価を行っていると思われます。それが今頃になって「直接法は信頼できない」とはどういうことでしょうか?いずれにせよ、今後はFriedewald式(LDL=総コレステロールーHDLー1/5中性脂肪)により求めた値を使用することを勧めています。しかし、この計算式は中性脂肪が高値(>400mg/dl)の場合には適当ではありません。その場合にはnon-HDLコレステロール(総コレステロールーHDL)という指標を用いることになります。non-HDLコレステロールはLDL+30とよく相関することが知られています。また中性脂肪の値を使用していないため、食後に採血した場合の値でも問題がないという利点があります。


「緩徐進行型T型糖尿病・SPIDDM」

(2011年11月)

糖尿病は、発症の原因により、大きく2つのタイプに分かれます。子供や若い年齢で発症することが多いT型糖尿病と、遺伝的要因を背景にして、生活習慣のなかから発症する2型糖尿病です。T型糖尿病では、インスリン注射が必須となりますが、2型糖尿病では必ずしもそうではありません。食事療法と運動療法が基本で、それに薬物療法が加わって初めて血糖コントロールをうまく行うことが出来るのです。

T型糖尿病発症のタイプの中に、「緩徐進行型T型糖尿病」があります。初期の病状は2型糖尿病と同じ経過を辿り、数年?数十年で膵臓のβ細胞が破壊され発症します。長年にかけて進行する為2型糖尿病と間違いやすいのです。

<SPIDDMの特徴>

  1. 膵島細胞抗体(ICA)もしくは抗GAD抗体が、症状の進行期間中は持続的に陽性を示す。
  2. インスリン自己抗体(IAA)も持続陽性を示す場合がある。
  3. 発症年齢は30歳?50歳である場合が多く、急性発症のIDDMに比べ高齢である。
  4. β細胞障害の速度は、女性よりも男性の方が進行が速い。
  5. β細胞は若干残存している場合が多い。一方、膵外分泌腺組織には顕著な萎縮が認められ、しばしば外分泌腺周囲にCD-8(キラー細胞及びサプレッサーT細胞のマーカー。それぞれ、ガン細胞やウィルス感染細胞を傷害する働きや、免疫反応が過剰になった時にそれを抑制する働きがある)陽性のリンパ球浸潤を認める。また、膵外分泌腺抗体が持続陽性を示す場合がある。
  6. 高感度なCペプチド(CPR)の測定系でのみ検出できる程度の、僅かなインスリン自己分泌機能の残存がある。
  7. 膵外分泌機能には検査は低値を示すことが多い。
  8. 急性発症のIDDMに比べ、GAD抗体価は高く、長期間陽性を示す。

SPIDDMの症状には個人差があるが、自覚できる程度の高血糖症状(口渇、多尿、体重減少)が現れない場合には、気付かないうちに腎症や神経障害等の合併症が進行している事があります。定期的な健康診断等で「糖尿病の疑いあり」又は「境界型」と判定された場合、自覚症状が無いからと長期間放置する事は絶対にあってはなりません。

緩徐進行型T型糖尿病は、早い時点でインスリン注射を開始する事で自分自身のインスリンを作る能力が残存する事がわかっています。
自分自身のインスリンを作る能力が残っていれば血糖コントロールが落ち着きやすく、合併症も進みにくいのです。

生活習慣の正常化と血糖降下薬/インスリン等の薬物療法を並行しながら膵臓が疲弊しないような生活を送る事が重要なのです。


熱中症について

(2011年8月)

◆熱中症について

この夏も、熱中症で体調を崩し、病院を受診する人が多いようです。そこで、熱中症についてまとめてみました。

【症状】
めまい・失神・頭痛・吐き気・気分が悪くなる・体温が高くなる・異常な発汗(または汗が出なくなる)など。

【重傷度分類】
T度(軽症 日陰で休む 水分補給)
U度(中等症 病院にかかり補液を受ける必要がある)
V度(重症 救急車で救命医療を行う医療施設に搬送し入院治療の必要がある)

種類(旧分類) 
従来は下記のような用語が用いられていた。
○熱失神
(直射日光の下で長時間行動や高温多湿の室内で起きる。発汗による脱水と末梢血管の拡張によって、身体全体の血液循環
量が減少した時に発症する)
○熱痙攣
(大量の発汗後に水分だけを補給して、塩分やミネラルが不足した場合に起こる)
○ 熱疲労

(多量の発汗に水分・塩分が追いつかず、脱水症状になっ
たときに発症する)
○熱射病
(視床下部の温熱中枢まで傷害されたときに、体温調節機能が失われる事により生ずる)

  熱失神 熱痙攣 熱疲労 熱射病
意識 消失 正常 正常 高度な障害
体温 正常 正常 〜39℃ 40℃以上
皮膚 正常 正常 冷たい 高温
発汗 (+) (+) (+) (-)
重傷度 T度 T度 U度 V度


【かかりやすい原因】

環境
・前日より急に温度が上がった日
・温度が低くても多湿であれば起こりやすい
・室内作業をしている人が、急に外に出て作業をした場合
・作業日程の初日?数日間が発症しやすい
・統計的にかかりやすい時間帯は、午前中では10時頃、午後からでは13時から14時頃に発症件数が多い

素因
・5歳以下の幼児
・65歳以上の高齢者
・肥満者
・脱水傾向にある人(下痢など)
・発熱のある人
・睡眠不足
・遺伝子的素因

【予防のために】
・暑いときは無理をしない
・環境状況に応じて運動量を調節し、休息を取る
・適切な水分補給をする
・暑い日は、白っぽい服、通気性、吸湿性に優れた服を選ぶ
・汗をたくさんかいたときは、着替えることも忘れないように
・帽子をかぶったり、肩から首を手ぬぐいで覆うのも効果的


今年はとくに「節電」が叫ばれていますが、「節電」を意識するあまり健康を害することのないよう、気温や湿度の高い日は、我慢せずエアコンなどを使用するなどして、熱中症対策をして行きましょう。
H.23年8月10日 赤池

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◆アクトスについて
 フランスとドイツがアクトス(ピオグリタゾン)の新規処方制限を決定しました。アクトス服用により膀胱癌の発症リスクが増加する可能性が示唆されたためです。
 この報道はかなり衝撃的なものです。日本国内でも非常に多くの糖尿病患者にアクトスが処方されています。今後、そのすべての患者や家族の方に膀胱癌発症のリスクを説明していった場合、かなりの割合で処方中止になると思われます。副作用の病名が「癌」となると、やはり皆怯んでしまうんではないでしょうか?
 しかしアクトスの処方が減少した場合、糖尿病コントロールが悪化する人が増えることが危惧されます。ノスカールが消えてしまった今、アクトスは現在日本で唯一使用できるチアゾリジン誘導体製剤ですが、今までこのカテゴリーの薬剤を使ってみて著効する人をたくさん診ました。そういった患者がアクトスを拒否した場合のデメリットは相当大きいのではないかと考えてしまいます。
その他にもアクトスのメリットとして心血管イベントの抑制とか脂質代謝改善作用などが報告されています。10万人あたり、わずか数人増える(かもしれない)膀胱癌のリスクとアクトス処方によるメリットを天秤にかけることは難しい判断になりますが、個人的な意見としては、全体的に見た場合は患者の不利益の方が大きいような気がしています。今後のEMAやFDAそして厚生労働省の方針を注視していきたいと思います。H.23年6月25日 赤池

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◆インクレチン糖尿病薬について(2011年3月)

食事を摂取することで消化管から分泌され、膵臓のβ(ベータ)細胞に作用してインスリン分泌を促進する消化管ホルモンの総称を、インクレチンと言います。代表的なものとしては、GLP-1が挙げられます。
GLP-1の働きには、インスリン分泌の促進だけではなく、グルカゴンの分泌の抑制、消化管運動の抑制、食欲の抑制、肝臓でのグリコーゲン合成酵素の促進、肝臓のβ細胞の保護や増殖作用、満腹中枢への作用による体重増加の抑制などがあります。2型糖尿病の治療において膵臓への作用はもちろん、膵臓以外の作用にも効果があると考えられています。
GLP-1は分泌されても、すぐに体内にあるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-W)と言う酵素により分解されます。そこで、DPP-Wの働きを抑え、体内のGLP-1の濃度を上昇させ、インスリンの分泌促進やグルカゴンの濃度低下の作用を強くして(図)血糖コントロールを改善することを目的に作られた薬を、DPP-W阻害薬と言います。また、GLP-1のかわりにGLP-1の鍵穴(GLP-1受容体)にくっつき、GLP-1のいろいろな作用を発揮するために作られた薬を、GLP-1受容体作動薬と言います。このような薬の事を、インクレチン糖尿病薬または、インクレチン関連薬と言います。2剤の大きな違いは、DPP-W阻害薬は経口薬でGLP-1受容体作動薬は注射薬であることです。
これらは、以前より糖尿病の治療で使われていたスルホニル尿素(SU)薬とは効き方が違うので、SU薬が効かない、あるいは飲み始めたときと比べて効かなくなった方にも、効果が出る可能性があります。さらに、糖尿病発症後の早い時期に使用することで、膵臓のβ細胞を維持してインスリン治療の導入を遅らせることが期待される薬です。
特にDPP-W阻害薬は食事の影響を受けにくいので、生活習慣に合わせて飲むことが可能な薬であり、服用を続けやすい薬であるといえます。
しかし、DPP-W阻害薬GLP-1受容体作動薬の主な作用としては、GLP-1の作用を介してインスリンの分泌を促進させることであるために、速やかな高血糖の治療が必要な方、1型糖尿病や手術前後などでインスリン治療による血糖管理が必要な方、さらに(DPP-W阻害薬では)腎臓に重い疾患のある方には、この薬剤は適応しません。
DPP-W阻害薬GLP-1受容体作動薬は、安全面において評価の高い薬剤です。単独での服用であれば、SU薬と比べても低血糖を起こしにくいです。しかし、SU薬と使うことで重い低血糖を起こしたとの報告があります。ほかの血糖降下薬を飲んでいてこれからDPP-W阻害薬GLP-1受容体作動薬を始める方や、ほかの血糖降下薬とDPP-W阻害薬を一緒に飲んでいる方は、低血糖には特に注意するようにして、万が一、症状が出た場合には、早めに主治医に相談するようにして下さい。

図  DPP-W阻害薬・GLP-1受容体作動薬の作用機序]


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食後血糖値の測定意義
(2011年1月)

阿波市の「広報阿波」の12月号"うちのお医者さん"という阿波市の病院を紹介するページに、赤池内科が紹介されることとなりました。(下記掲載内容抜粋)

 検診で「空腹時血糖値」が正常範囲であった場合、これだけで安心してよいものでしょうか。現在、日本だけでなく全世界で糖尿病患者が急増しています。糖尿病になると他の様々な病気の引き金になってしまいます。これを食い止めるためには、糖尿病の早期発見・早期治療が必要です。そのための指標として重要なのが「食後血糖値」の測定なのです。

 健常者の場合、食事の後でも血糖値が140を超えることはありません。食後2時間の血糖値が140以上である場合を「食後高血糖」と言います。糖尿病を発病する前の段階(予備軍)や初期の糖尿病の場合は、空腹時血糖値が正常であってもこの食後高血糖がよくみられます。また、過去1~2カ月間の血糖の平均値を反映するヘモグロビンA1cが高くなくても食後高血糖を認めることがしばしばあります。
 では食後高血糖になると何がいけないんでしょうか。一番の問題は、食後高血糖が心血管系の病気を引き起こし、死亡のリスクを増大させてしまうということです。予備軍の人に食後高血糖が多いことは前述しましたが、つまりこの段階から心筋梗塞や脳卒中が増えてしまうわけです。更に食後高血糖は網膜症や膵臓癌、認知症と関連することもわかっています。

  空腹時血糖値やヘモグロビンA1cだけしか測定したことのない人や血縁者に糖尿病がいる人などは、一度食後1~2時間の血糖値を確認してみてはいかがでしょうか。もし食後高血糖を認めたなら、「何らかの対策を講じる必要がある」と国際糖尿病連合も勧告しています。何らかの対策とは食事療法や運動療法はもちろん、場合によっては薬物療法も必要になるかもしれません。食後高血糖を早期に治療することによって、将来の循環器系疾患発症を回避できる可能性が高まると考えられます。

 

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「糖尿病治療について」(2009年1月)
 高脂血症や高血圧は、医師が薬を処方するだけでかなりよくなります。つまり患者さんがさほど努力しなくても、薬の力だけでそこそこのレベルにまでコントロールできます。特に高脂血症などでは、本当にいい加減な服用方法なのに血中脂質がきちんと低下している人も多く居ます。それに対して糖尿病の場合は、医師だけが一所懸命になってもさほど病状が改善しません。自分では何も努力しないで、食べたいだけ食べ飲みたいだけ飲んで「儂の体は先生にまかしとるけん」とか言う患者さんも居ますが、そういう人は決してHbA1cが低下しません。医師の努力と患者さんの努力がかみ合って、初めてコントロール状態が良くなります。病院にかかっているというだけで大丈夫だと思っている患者さんの意識改革をすることは結構大変です。「そんなにうるさく言うんならもういい」と離れていく人も少なくありません。
 逆に患者さんは食事や運動で努力しているのに、医師が効果のない薬を延々と続けているケースも時々見られます。外来が忙しい大病院にかかっている患者さんなどは、HbA1cが8~9%以上が続いていてもずっと同じ治療法を続けているケースもあります。
 このように糖尿病治療は医師と患者のいずれか一方が怠慢になってしまうと、うまくいかなくなってしまいます。そこに治療の難しさがあるわけですが、医師の第一の仕事は患者さんに病識を持たせて「何とか糖尿病をよくしたい」と心から思わせることか、と感じています。


「強化インスリン療法について」(2008年8月)
 非常にコントロールの悪い2型糖尿病の患者さんが数名居り、当院ではそういう患者さんに対してはやむなく強化インスリン療法を行っています。しかし以前より、高インスリン血症は肥満や動脈硬化に関与することが言われており、この治療法で矛盾がないのかという疑問が常に頭の中にありました。
 先日、何気なくメディカル トリビューンを読んでいたら、「強化インスリン療法より減量が有効」という記事が目に付きました。それによると、米国のUnger教授が「インスリン抵抗性および肥満を伴う2型糖尿病患者に対する強化インスリン療法は、糖尿病の原因となる脂肪酸を増加させるため禁忌である」と述べています。確かにインスリンには脂肪分解抑制や脂肪酸合成促進といった作用があります。だからインスリンの容量を上げていくと、結局は体脂肪や血中脂肪を増やしてしまう結果になってしまうのです。
 Unger教授は「インスリンを増量すると、ブドウ糖が脂肪産生に回る。現在では、体脂肪を減らしてインスリン抵抗性に対処することで糖尿病を改善する治療法がある。インスリン療法は、このような治療法がすべて不成功な場合にのみ用いるものだ」としています。
 いろんな治療法でうまくいかなかったから強化インスリン療法になったわけなんですが、強化療法に限らずインスリン療法を行っている患者さんは、出来る限りインスリン抵抗性を改善する治療に努め、インスリン量はなるべく抑えていった方が賢明かもしれません。


「食後高血糖について」(2008年6月)
 医者に成り立ての頃、今から二十数年も前になりますが、糖尿病のコントロールは空腹時血糖値に強く重点を置いており、外来患者さんも食事を摂らずに来院してもらって血糖値を測定していました。その後、血糖コントロールの指標としてはHbA1cが主流となり、外来でも随時血糖を測定することが一般的となりました。
 HbA1cを指標とした糖尿病の厳格な管理を行うにあたって、食後の急激な血糖上昇(グルコーススパイク)を無視していてはHbA1cを目標値まで下げることは困難です。またそればかりでなく、最近になって食後高血糖そのものが相当有害であることが明らかになってきました。
 2007年9月に、国際糖尿病連合(IDF)が「食後血糖管理のためのガイドライン」を発表しました。それによると、食後高血糖は心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害のリスクを高めることが明記されています。また食後高血糖は糖尿病になる前の予備軍の段階から認められ、その管理は非常に重要であることが記されています。
 健常人の血糖値は、何を食べてもいつ測定しても常に70~140mg/dlの狭い範囲内で変動していると言われています。国際糖尿病連合では、この健常人と変わらない血糖変動、即ち食後でも140mg/dl未満を目指すことを目標にしています。